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【書評】PASSION 成功の情熱 稲盛和夫 1996年 PHP文庫

【書評】PASSION 成功の情熱 稲盛和夫 1996年 PHP文庫

はじめに

本書『PASSION 成功への情熱』は、『心を高める、経営を伸ばす』を米国人向けに再編集した書籍であり、その英語題が A Passion for Success であることから、本書のタイトルが生まれている。単なる翻訳本ではなく、海外読者にも伝わるよう再構成された点に本書の特徴がある。

PASSION という言葉は、以下の7つの要素の頭文字として定義されている。

Profit
Ambition
Sncerity
Strength
Inovation
Optimism
Never Give Up

本書ではこれらの項目ごとに内容が整理されており、日本人読者にとっても理解しやすい構成になっている。特に印象的なのは、質疑応答が体系的にまとめられている点である。理念が抽象論に終わらず、現実の悩みや迷いにどう向き合うかが、具体的な言葉で示されている。

盛和塾が国内約7,300名、海外約7,600名の塾生を擁していたという事実からも、米国人向けに再編集した本書および稲盛思想が与えた影響の大きさがうかがえる。

印象に残った七つのポイントと考察

① 意義ある人生を生きるために何が必要か

「多くの人は生きることに追われ、人生の意味や情熱を見失いかけている。しかし本当は誰もが、意義ある人生を燃えるような情熱で生きたいと願っている。」

1996年に語られたこの言葉は、ITやSNSが浸透した現代において、むしろ一層の切実さを帯びている。
他者の“成功”や“充実”が可視化され続ける社会では、自分の価値基準を見失い、「何のために生きているのか」が分からなくなる人は少なくない。

稲盛和夫が本書で示しているのは、意義ある人生とは外から与えられる評価によって決まるものではなく、社会のために役立つ、自らの内に燃える情熱によって形づくられるという視点である。
人生の意味は探し回って見つけるものではなく、「人のために役立つこと」、「目の前の仕事や課題に、どれだけ真剣に向き合っているか」によって、後から立ち上がってくるものだという考え方だ。

本書は、「成功するためのテクニック」ではなく、どう生きれば人生に意味が宿るのかを真正面から問いかけてくる。
経営者向けの書籍と捉えられがちだが、実際には、人生の目的や情熱を見失いかけている現代人すべてに向けた一冊であり、「意義ある人生を生きるために何が必要か」という根源的な問いに、静かだが力強い指針を与えてくれる。

② 潜在意識をどう働かせるか

一般的に潜在意識をうまく使えれば、自分の思った以上の能力を発揮できると知られている。では、実際にどう潜在意識をはたらかせるのか?

本書では難題の解決に潜在意識を使う特別なテクニックはあるのか、という問いがあった。それに対して稲盛和夫は「情熱を持って集中すること以外に特別な方法はない」と答える。

潜在意識を鍛えるノウハウは数多く語られているが、この答えは驚くほどシンプルである。情熱を持って没頭したとき、人は自分でも気づかぬ力を引き出す。いわば「火事場の馬鹿力」のようなものだが、それを意図的に引き出す鍵が“情熱”だという点に腑に落ちた。

潜在意識を働かせるのにテクニックはない。ただ、情熱を持って集中するだけで良い。

③ アメーバ経営と利己性の問題

アメーバ経営では、各組織が自分たちの利益だけを追わないか、という問いに対し、稲盛和夫は「利己的な行動は組織全体に悪影響を及ぼすため、上位の責任者が是正する」と述べている。

重要なのは、自由と管理の両立である。各アメーバには裁量を与えつつ、結果はグループ全体で管理する。単体と全体の両方を見渡せる管理者の存在が、組織運営の要になるという指摘は、実務に直結する示唆だと感じた。

そして、アメーバ経営に必要なのが、「従業員の物心両面の幸福の追求」の浸透である。それが根底にあることで無謀で破壊的な自己主義を抑えることが可能となる。

④ 誠実さが尊敬を生む

「誠実さは信頼を生み、信頼は尊敬を生む。尊敬こそが、人を率いる力になる。」

商売においてお客様から尊敬されることは商売の最高の結果だと考えている。しかし、それは非常に難しい。

では、尊敬されるにはどうすればよいか。その答えは、意外にも華やかな成果ではなく、日々の誠実な姿勢にある。まず誠実であること。その積み重ねが、結果として人を動かす力になるという点は、経営以前に人としての指針だと感じた。

常に誠実であること。自分は聖人ではないので100パーセント誠実であることが難しい。しかし、1日を振り返り誠実になれるよう努力を続けること。

⑤ 真の強さとは何か

真の強さは、富や名声、体力ではなく、「正しいことを行う気持ち」にある。迷いやためらいは弱さの表れであり、勇気とは正しさを選び取る力だという言葉は、判断に迷ったときの基準になる。

では、正しいことは何か?ということになるが、「人のためになること」が正しいことであり、人のために行動できることが強さに繋がる。

⑥ 「できない」と言われることに挑む

稲盛和夫は「次にやりたいことは、周囲から決してできないと言われていることだ」と考え、革新を起こしてきた。その姿勢を知り、自分が“できそうなこと”に逃げていないかを省みるきっかけになった。

成長するためには、他人から否定される領域にこそ踏み出す必要がある。

自分はどうか?当たり前のことしか考えていないのか?次に進むために今の自分には難しいことに取り組むことが重要。

⑦ イノベーションは改善の積み重ね

イノベーションはひらめきではなく、「昨日より今日、今日より明日を良くする改善」をトップ自らが続けることから生まれる。

ひらめきが出ないと感じるのは、日々の改善が足りていない証拠かもしれない。派手な発想よりも、地道な努力こそが革新の源泉であるという考え方は、実務的で説得力がある。

エジソンは「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」と言った。これは「昨日より今日、今日より明日を良くする改善」をずっと続ける中でイノベーションが閃きのように起こるということだ。

まとめ

『心を高める、経営を伸ばす』を日々読み進めてきた中で、本書は質疑応答という形式によって、その思想をより現実的で立体的なものとして理解させてくれた。理念を知っているつもりでも、問いとして突きつけられることで、自分の甘えや迷いが否応なく浮き彫りになる。

自分勝手な考え方、行動をしていないか
成果を急ぐあまり、情熱や誠実さを置き去りにしていないか。
「できること」ばかりを選び、「すべきこと」から逃げていないか。

本書は、そうした問いを読者自身に投げ返してくる。

経営者に限らず、人生の意味や仕事への情熱を見失いかけている人にこそ勧めたい一冊であり、意義ある人生とは何かを考え続けるための“軸”を与えてくれる本である。

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