【書評】技術開発に賭ける 稲盛和夫
はじめに
この本は、稲盛和夫が盛和塾やトヨタ車体などで行った講演がまとめられた本であり、1970〜1980年代、つまり稲盛和夫が40代・50代の講和であり、稲盛和夫の著書が70代・80代のものが多いので、若い時の考え方を窺い知ることができ、また闘う稲盛和夫の側面を知ることができる。
そして、この本の題名は「技術開発に賭ける」とあるように、技術開発に関わる考え方が深く細かく説明されており、自社IT商品・ITサービスの開発へのヒントになる。
全ての企業は、新商品・新サービスを常に開発して進化し続けなければならない。京セラは、松下電器への納品のために工夫をしてコスト削減を徹底的に行った。1966年にはIBMから基盤の受注があり、難航を極めたが納品した。第二電電を設立し、通信コストの削減を行った。稲盛和夫・京セラは常に新サービス・新商品の開発を続けており、その考え方が、この本にまとめられている。
さらに重要なのは、新商品・新サービスは必ずしも既存市場に存在するとは限らない点だ。
その場合、技術だけでなく「市場そのものを創る」必要がある。技術開発同様、マーケットの開発も重要であり、稲盛和夫は、本書で人口エメラルドの事業を通してどのような活動を行ったかを説明している。
業種を問わず、多くの会社が読むべき本である。
本書に書かれている技術開発・マーケット開発で、特に重要な3点をまとめたい。
必要なのは技術の「強さ」
稲盛和夫は技術の強さについて、「自分たちが開発した材料と、それを使った製造技術の延長線上にあるものの「強さ」について、研究を担当する者と常にディスカッションしています。」と述べる。そして柔道のたとえで、このように説明する。
「自分の得意技が一本背負いだとしますと、他の多彩な技も磨くのではなく、一本背負いだけをしきりに練習することになります。問題は、それが地方大会でしか通用しないのか、全国大会までなら通用するのか、それとも世界大会でも通用するのか、ということです。
ばかの一つ覚えのように一本背負いを使いますから、相手もこちらのやり方を心得ており、その一本背負いを防ぐ方法を必ず考えてきます。しかし、磨き抜かれた一本背負いであれば、畳に膝をついてでもかけられます。必ず自分の有利な状況へ持ち込んで得意技をかけることしか、われわれにはありません。」
この例は、まさしく2024年パリオリンピック柔道で金メダルを獲得した角田夏実選手である。「分かっていても防げない」圧倒的な巴投げで金メダルをとった。得意技を極めれば、世界をとれるのである。
自分の技術の強さは何か?何なら世界を目指せるのか?一つの技術なのか?組み合わせ技術なのか?
また、この技術の強さに飛び石をうってはならない。もしかしたらたまたま当たるかもしれない。しかし、飛び石では次の展開ができないのである。あくまで技術の延長線上で強さを磨かなければならない。
開発能力を未来進行形でとらえること
技術者が陥りやすい問題に、現在の自分で分かっている技術でできることを考えてしまう。そうなると、発想の幅が広がらない。そこで、稲盛和夫はこう述べる。
「開発能力を未来進行形でとらえることは、逆に言いますと、自分が上司やトップ、お客様に約束したことに対して、自分を追い込んでいくことになります。自分にとって都合の悪い状況をつくり、自分を追い込んでいくのです。」
技術者に求められるのもこの考え方である。自社の得意な技術の延長線上ではあるものの、お客様に求められるものができるかどうかわからない。しかし、未来進行形で考えれば、お客様の求めるものが必ず存在するであろう。それをするのが、自社なのか、他社なのか。会社が発展するためには自社がお客様が求めるものを開発しなければならない。
未来進行形で考えることで、「やれるかどうかわからない」が「必ずできる」に変わり、企業の発展に進む。
世界共通の販売条件
新商品・新サービスを開発した後に必要になるのが販売である。そして、その販売に必要な条件を稲盛和夫は、世界共通として以下のようにあげる。
世界共通の販売条件
1・まずは社名を世間に浸透させる
2・非常にクイックな開発能力を持つ
3・他社より優れた製品を継続的に供給する
4・市場で勝てる値決めをする
5・お客様の希望納期に供給する体制をつくる
技術力と販売力は違う。技術の会社だと「技術力があれば勝手に売れる」と思ってしまいがちだが、販売力をあげるには稲盛和夫も言うように「社名を世間に浸透させる」ことが重要である。
「社名を世間に浸透させる」は、まずは自社の商品のターゲットとなる見込み客に社名を浸透させることが重要である。それが営業力の必要性へとつながる。
その後、クイックな開発能力、優れた製品の継続的な供給、値決め、納期となるのだが、それらを丁寧に着実に行っていかなければならない。
この考え方は京セラのような製造業だけではなく、全ての業種に言える。請負の仕事も同様である。営業の結果、請負の仕事を受注して納品したとする。請負だとそこで止まってしまう。しかし、次に新しい製品・サービスを継続して提供できれば、販売が広がる。開発の強みを活かすのである。どんな仕事でも、自分の仕事の延長上で強みを見つければ、必ず次へ進むヒントがある。
まとめ
本書は、
・技術開発
・市場創造
・販売戦略
を一体として捉える重要性を教えてくれる。それを具体的な事例をもとに学ぶことができる。
自社の開発は本当に延長線上で強みを磨けているか?販売は単発で終わっていないか?
開発から販売まで、自社で行っていることを振り返ることのできる一冊である。
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