【書評】成長発展の経営戦略 稲盛和夫
はじめに
本書は、1990年代の講話を中心とした経営講話選集の第三巻である。特徴は、理念だけでなく具体的な企業事例を通して経営の本質を語っている点にある。
中でも印象的なのが3Mのエピソードだ。3Mの創業者は山師に騙されて山を購入するが、困った状況でも、その砂の特性を活かしてサンドペーパーを開発し、そこから粘着テープ、磁気テープへと事業を展開していった。
これらの事業展開で重要なのは、すべてが自社の技術の延長線上にあるという点である。
3Mは無関係な事業には手を出していない。技術の延長で多角化を行ってきた。この考え方は、稲盛和夫の過去の著書からも知ることができるが、3Mのエピソードを通しても、具体的に理解することができる。
このようなエピソードを踏まえつつ、本書から特に重要だと感じた3点を挙げる。
「事業家」とは何か
事業家について、稲盛和夫はこう述べる。
「事業家とは、何の変哲もないことを事業にする才覚をもった人」
この言葉は、事業の捉え方を大きく変える。
事業というと革新的なアイデアや特別な才能を想像しがちだが、多くの場合は違う。誰でもできることを、徹底し、価値に変える。その力こそが事業家の本質である。
日々の業務は地味で単調なものが多い。しかし、その中に創意工夫を重ねることが、事業へと昇華させる。
京都企業に共通する8つの気質
本書では、京都の企業経営者に共通する気質として、以下が挙げられている。
・冒険心
・挑戦心
・勝ち気・負けん気
・創造性(常識に満足しない)
・正義感
・陽気・積極性
・反骨精神
・努力
京都の大企業経営者のこれらの気質が、世界に通用する企業を生み出してきた背景にある。
さらに重要なのは、「自分の分をわきまえた経営」である。自社の強みが活きる領域に集中するという姿勢は、3Mの事例とも通じる。
ロームとバッファローに見る共通点
ロームは「落ち穂拾い半導体メーカー」として、大手が手放した分野を拾い上げ、成長してきた企業である。
この話から思い出されるのが、バッファローの牧誠氏の言葉、「枯れた技術の水平統合」である。
どちらも共通しているのは、
・最新ではない
・しかし需要がある
・それを徹底的に磨き、広げる
という戦略である。
これはまさに、「何の変哲もないことを事業にする」実践例である。事業のネタはどこにでもあるということが理解できる事例である。
まとめ
本書を通じてより理解できるのは、「当たり前を徹底すること」と「強みの延長で戦うこと」とである。
また稲盛和夫は、事業には
・天の時
・地の利
・人の和
という三要素が必要だと説く。理想だけでなく現実も踏まえた判断が求められる点は、非常に現実的である。
経営講話選集の他二冊よりもより大きな視点の講和であり、事業に関するより深い理解を得ることができる。

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