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【書評】戦略プロフェッショナル 三枝匡

【書評】戦略プロフェッショナル 三枝匡

はじめに

本書は、大企業に勤める主人公・広川洋一が、子会社である新日本メディカル社(売上20億円、従業員100名)に赴任し、まったく売れていなかった製品を立て直し、年間売上8億円の事業部を3年で20億円規模へと成長させる過程を描いた物語である。

物語パートと著者による解説が交互に配置されており、ストーリーを追いながら戦略の考え方を理解できる点が本書の大きな特徴である。実話をもとにしているため、机上の理論ではなく、現実の経営現場に即したリアリティを感じることができる。

著者・三枝匡の戦略思想の中核にあるのが、「絞り」と「集中」である。本書では、市場分析を通じて製品販売が勝ちパターンに入るまでの流れと施策、さらに顧客セグメントをマトリクスで整理し、営業をかける順序を決めていくフレームワークの有用性が具体的に示されている。

中小企業では、社長の直感によって経営判断がなされることが多い。本書では直感の重要性も否定していない(167ページ)。しかし、フレームワークに基づいて思考することで、その直感を後から論理的に説明できるようになる点が重要である。稲盛和夫が語る「悲観的に計画し、楽観的に実行する」という言葉にある「計画」の部分を支える道具として、本書のフレームワークは極めて有用である。

本書で描かれるフレームワークについて

本書で描かれるフレームワークは、主に以下になる。

・業績分析
・市場の規模・成長率分析(プロダクトライフサイクル)
・競合分析
・絞りと集中・セグメンテーション

業績分析について

業績分析では、商品群をいくつかのグループに分け、伸び率を分析する。自社の製品やサービスを、勝ち組、負け組、成長グループなどに分類し、客観的に把握することが重要である。

次に行うのがマーケットシェア分析である。グループごとの市場シェアを把握することで、自社の立ち位置が明確になる。ただし、業界によっては信頼できる市場データが存在しない場合も少なくない。

その場合は、エリアや業種などで対象を絞り込み、把握可能な範囲で具体的な数値を出すべきだと個人的に考えている。完全なデータがなくとも、仮説を立てることに意味がある。

市場の規模・成長率分析(プロダクトライフサイクル)

プロダクトライフサイクルは、著者が「完璧に理解することをすすめる」と強調するほど重要な概念である。たとえば「現在の主力事業は成長期の前半にあり、今後は新規参入が増えて競争が激化する」といったように、事業の状況を具体的にイメージできるようになる。

本書107ページの図を参照すると理解しやすい。さらに109ページでは、プロダクトライフサイクル上で自社がどの成長ルートを辿っているかを把握する考え方が示されている。著者は、最も強い競争ポジションを獲得できるのは「ルート1」であるとしている。

エクセレントカンパニーとは、このルート1を繰り返し実行できる企業である、という指摘は非常に示唆に富む。

 

競合分析

戦略的に重要なのは、自社が競合と比べて「いい勝負ができているかどうか」である。その判断のためには、何らかの基準が必要となる。

まず基準を設定し、仮説を立てる。次に現実を観察し、仮説とのズレを確認する。そのズレがどこから生じているのかを分析することで、競合のポジションに対する理解が深まる。

競合分析とは、単なる比較ではなく、自社の認識を修正していくプロセスであることが、本書を通じて明確に示されている。

絞りと集中・セグメンテーション

本書で最も重要なテーマが「絞り」と「集中」である。著者は、経営戦略の要諦はこの二つに尽きると断言している。分析はあくまで、そのための道具である。

絞りと集中を行うために不可欠なのがセグメンテーションであり、本書ではマトリクスを用いた整理方法が多用されている。たとえば、2×2のマトリクスを作成し、横軸に金額、縦軸に利用者数を置き、自社や競合をプロットすることで、自社の立ち位置が可視化される。

マトリクスは2×2、もしくは多くても2×3までに抑えるというルールが示されているが、軸の設定自体は自由である。本書では多様な切り口のマトリクスが紹介されており、実務への応用イメージが湧きやすい。

こうした分析を通じて、自社の強みと弱みを把握し、顧客・市場・製品を絞り込み、そこに集中していくのである。

まとめ

「絞り」と「集中」は重要だと理解していても、方法がわからなければ、的外れな施策に走ってしまう。本書は、その方法をフレームワークとして整理し、具体的かつ論理的に示している点に大きな価値がある。

企業規模や業種を問わず、「絞り」と「集中」は不可欠である。それを実行可能な形で組み立てるための指針を与えてくれるビジネスマンにとって必読の一冊である。

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