実学 稲盛和夫
はじめに
『実学』は、アメーバ経営を基盤とした稲盛和夫式会計学を学ぶことができる一冊である。別書『アメーバ経営』と併せて読むことで、理解はより一層深まる。
『アメーバ経営』では具体的な数字を用いた実践的な説明が多い一方で、『実学』では会計や経営に対する根本的な考え方が語られている。本書で全体像を理解してから実践に入ることで、アメーバ経営の本質をつかみやすくなるだろう。
アメーバ経営を自社に取り入れたいと考える経営者にとって、本書はまず最初に読むべき一冊である。
会計というと、会計士や税理士に任せて税務処理を行うもの、という印象を持ちがちである。しかし稲盛和夫は、会計の本質はそこにはないと説く。
本来の会計とは、経営を行うための「羅針盤」であり、経営者はそれを常にタイムリーに把握していなければならない。
経営とは、目的地の見えない大海原を航海するようなものである。航海に羅針盤が不可欠であるように、経営にも会計という羅針盤が必要なのだ。
税金を計算するための会計と、経営を行うための会計はまったく別物である。本書は、その違いを明確に理解させてくれる。
重要な3つのポイント
会計データは現在の経営状態をリアルタイムで伝える
本書の中で、稲盛和夫は次のように述べている。
「経営を飛行機の操縦に例えるならば、会計データは経営のコックピットにある計器盤にあらわれる数字に相当する。計器は経営者たる機長に、刻々と変わる機体の高度、速度、姿勢、方向を正確かつ即時に示すことができなくてはならない。そのような計器盤がなければ、今どこを飛んでいるのかわからないわけだから、まともな操縦などできるはずがない。
だから、会計というものは、経営の結果をあとから追いかけるためだけのものであってはならない。いかに正確な決算処理がなされたとしても、遅すぎては何の手も打てなくなる。会計データは現在の経営状態をシンプルにまたリアルタイムで伝えるものでなければ、経営者にとっては何の意味もないのである。」
一般的には、会計は過去の実績を確認するものであり、月に一度まとめて見ればよい、と考えられがちである。しかし稲盛和夫はそう考えない。
会計は「日々見るもの」であり、リアルタイムで経営の現在地を把握するためのものだと説く。
日々数字を見るというのは、決して簡単なことではない。採算性を把握するためには、最小単位で日々数字を入力・集計する仕組みが必要になるからだ。
当社のようなシステム開発業では進捗管理が必要であり、日々の業務の中で正確に数字を追うのは容易ではない。
しかし、数字を追うことで毎日採算性を確認でき、問題があれば即座に対策を打つことができる。小規模企業は大企業に比べて仕訳の数こそ少ないものの、人手や体制の問題で実行が難しいケースも多いが、アメーバ経営と併せて徹底的に行う覚悟がいる。
社長の仕事とは、計器盤を見ながら操縦することである。
営業に問題があるのか、組織全体に問題があるのか、あるいはすでに墜落寸前なのか。
数字を通して現状を正確に把握し、日々対策を打ち続けることが、経営者の責務である。
数字から会社の問題を把握する
稲盛和夫は、数字を真剣に見続けることで、会社の問題は必ず浮かび上がってくると断言している。
「真剣に資料を見つめていると、数字の間の矛盾やおかしな数字が、どういうわけか目に飛び込んでくる。精魂を込めて見ていると、パッと見ていても、間違っている数字や問題のある数字がまるで助けを求めるように目の前に飛び出してくるのである。反対に、事前に数字がすべて十分にチェックされた資料であれば、私がいくら見ていても気にかかる点は見出せない。」
日々、問題意識をもって数字と向き合うことで、在庫の滞留や営業活動の鈍化など、会社の異変は驚くほど具体的に見えてくるようになる。
さらに、現場の実態を深く理解していれば、数字のわずかな変化からでも問題の本質を察知できるようになる。このレベルに到達するには相当な経験が必要だが、その出発点はシンプルだ。
すべてを数字で捉えることである。
経営のための会計とは、感覚や勘に頼ることではない。
現場を数字に置き換え、異変をいち早くつかみ、手を打つための武器なのである。
目標設定
目標設定は難しい。高すぎるのか、低すぎるのか、と悩んでしまう。しかし稲盛和夫は、経営者の目標設定の本質はそこにはないと言う。
「目標を設定するためのいい方法がわかっていれば経営なんて誰にでもできます。
問題は、目標値の高い低いではありません。まずは、経営者としてあなたが「こうありたい」と思う数字を持つことです。経営目標とは経営者の意志そのものなのです。そのうえで、決めた目標を社員全員に、「やろう」と思わせるかどうかなのです。」
会社の将来像が「世界一を目指す」ものであれば、「今年はこうありたい」という具体的な姿を描くことが重要である。そして、それを社員全員に「やろう」と思わせることができて初めて、目標は意味を持つ。
これは数字だけでは達成できない。
経営者自身が従業員を鼓舞し、「この人のためならやろう」と思ってもらえる存在でなければならない。
歴史映画で、戦いの前に指導者が名演説を行い兵士を鼓舞する場面がある。
経営者の目標設定も同じで、「こうありたい」という強い意志を持ち、それを社員に伝え、実行してもらうことで完成する。
目標設定は、数字だけでなく「心」で行うものなのである。「数字」と「心」。この二つを組み合わせることで本当のアメーバ経営となる。
まとめ
本書は、稲盛和夫が経営者に向けて説く「会計の本当の使い方」を示した一冊である。
重要なのは、
・日々、数字を確認しながら会社を運転すること
・目標設定とは「こうありたい」という経営者の意志であり、それを社員に高いモチベーションで実行してもらうこと
である。
その具体的な考え方と方法が丁寧に書かれており、小規模企業であっても仕組み化すれば必ず実践できる内容になっている。
会社が大きくなってから導入するのではなく、小さいうちから取り組む。
そうすることで、企業は健全に成長していくのだと強く感じさせられる一冊である。
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