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【書評】従業員をやる気にさせる7つのカギ 稲盛和夫

【書評】従業員をやる気にさせる7つのカギ 稲盛和夫

はじめに

タイトルからは人事やモチベーション管理の本のように見えるが、本書の内容はそれにとどまらない。競争の激しい市場の中で企業を成長させるために、経営者は何を考え、どう判断すべきか。稲盛和夫の経営観が実務的に語られた一冊である。

本書は盛和塾の塾生から寄せられた質問に稲盛和夫が答える形式で進む。例えば、

・市場が急激に縮小している
・グループ会社の一社は好調だが、もう一社はうまくいかない
・全く新しい事業に挑戦した
・経営理念と現実の経営が矛盾している

といった、どの会社でも抱えるだろう生々しい問題が取り上げられる。

それらに対する回答を通して、「従業員と共に会社を成長させるための経営の要点」が示されている。本書から、事業を発展させるうえで重要だと感じた点をまとめたい。

常に多角化、多面的な展開を考える

自分が現在、行っている事業に関して「この事業は将来、どうなるのか?」「今の仕事は広がるのか?」と言った不安を誰しも持つ。そして、稲盛和夫はそれに対してこのように説明する。

「掘っても砂しか出てこない業種もあるということ、すなわち、運、不運になるわけです。
では、どうすればよいのでしょうか」

そして、それに対する稲盛和夫の答えは、「多面化、多角化する」である。

一般に経営では「集中」が重要だと言われる。松下幸之助も専業の重要性を説いている。自分自身も個人的には専業のメリットを理解しているが、今、行っていることが「掘っても砂しかでない業種である」可能性が十分にあるため、事業の広がりを持つことが必要だと説く。

そのために2つの方法がある。

1・自分の強みを活かし、新しい商品・サービスを既存の顧客に販売する
2・自分の強みを活かし、新しい市場に、既存の商品・サービスを売る

多面化、多角化を行うことは一つの戦略として正しいことを納得し安心した。ただし多角化は「飛び石」で行ってはいけない。必ず 現在の事業の延長線上から始めることが重要である。

本業の重要性と営業の大切さ

多角化の必要性を説きながらも、稲盛和夫は何度も「まず本業を徹底して強くしなさい」と語る。本業が弱いまま多角化をすると、それは単なるギャンブルになってしまうからである。

多角化には、

・技術の創造
・商品の創造
・市場の創造

という三つの困難がある。これらを乗り越えるためにも、まず本業を強固にする必要がある。

その際に稲盛が特に強調するのが 営業の重要性である。営業とは単に商品を売ることではない。

・自分たちの考えを顧客に理解してもらう
・正しいことを正しく伝える
・信頼関係を築く

これらも営業の役割である。

技術者であった稲盛和夫自身が営業の重要性を語っている点は、非常に印象的である。

営業力・技術力・会計把握力を高めて本業を強くする。そして、多面化、多角化で成長させる。それが経営者としての役割である。

数字を隠すと人材は育たない

稲盛和夫は、人材育成のために「数字を公開して説明する」ことを説いた。人を成長させる方法は、世の中に多くあり、複雑に考えてしまいがちである。しかし、「数字を公開して説明する」とシンプルに考えれば良いのである。特に中小企業なら、会社の将来に期待するか、悲観するか、自分の待遇の向上を感じるのか、感じないのか、より伝わることになる。

そして、これを実践するのがアメーバ経営である。時間当たりの採算を計算し、それをもとに議論する。すると自然に目標が生まれ、組織全体が経営に参加するようになる。

ただしここで重要なのは、経営者自身の姿勢である。もし経営者が私利私欲のために無駄な経費を使っていれば、数字を公開することはできない。

正しい経営をしているからこそ数字を公開できる。そして数字を公開することで、人材が育っていくのである。

まとめ

本書のテーマは「従業員をやる気にさせる」である。しかし実際には、

・経営理念
・新規事業
・営業
・技術開発
・アメーバ経営
・人材育成

など、経営のあらゆる側面について語られている。

盛和塾の塾生からの現実的な質問に答える形式だからこそ、机上の理論ではなく 経営の現場のリアルを知ることができる。

ある経営者仲間が「稲盛和夫の本をすべて読めば、経営の全体像が分かるのではないか」と言っていたが、本書はまさにそれを実感させる一冊である。

松下幸之助は「経営は総合芸術である」と言った。

理念、営業、技術、会計、人材。それらすべてを統合して会社を発展させていく。

本書は、その意味を実務的に理解させてくれる良書である。

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